WRCを戦うためのホモロゲーションモデルというのは、世界的にも何台か公認されていたが、それらの多くは市販車としての完成度に磨きをかけれたものではなく、ユーザーに感動を与えてくれるような存在では決してなかった。そういったライバル車を研究したあとのデビューでもあり、初代エボリューション、通称エポIへの期待は高まるばかりだった。 ダイナミックなエアロフォルム。エアアウトレットを設けたアルミ製ボンネットフードなど、その外観の仕上がりと迫力はまさに期待通り。インテリアを覗いてみるとレカロ社製の特製セミバケットシートが左右に2脚備わる(GSRのみ)。これだけでも相当なアイテムだと思うが、さらにモモ社製ステアリングホイールまでが採用されている。RSは本格的レーシングバケットシートへの換装が前提となっているため、ビニール地のノーマルハイバックシートを採用している。その他の装備類は1.8lターボに準じているが、もともとセダンとして洗練されているランサーがベースなだけに過不足はない。
まず、エンジンのドライバビリティからチェックしてみる。ギャランVR-4の240PSから10PSアップの250PSとなった4G63型だが、そのハイスペックからは想像できないほどフレキシビリティに優れ、市街地走行レベルにおいても扱いにくさはまったくない。4G63型はもともと低中速トルクに優れたユニットで、エポIに搭載されてもその基本的な特性は引き継がれている。4速1000rpmからでも力強く加速し、6000rpmまで吹き上がって行く様は、とても2lの排気量とは思えないほどだ。5500rpmを過ぎたあたりからトルクの落ち込みを感じるが、回転上昇のレスポンスは悪化することなく、ハイパワー領域へと移行していってくれる。 ギャリングは多少ハイ&ワイドだが、この優れたトルク特性のおかげで加速性能はすこぶる高い。パワーウェイトレシオは4.7kg/PSと圧倒的で、動力性能の高さは4WDのトラクションと相まってこれまでの常識を打ち破っている。
ハンドリングはダートトラックを中心にテストして仕上げられただけあって、たっぷりとしたストローク感があって優れたロードホールディングを示している。しかしオンロードでのバランスとしては、強いアンダーステアを示す。これは、ラフロードやスノー路などの低u路におけるスタビリティを確保するのが主目的であり、意図的にそう設定されているものだ。低u路ではステアリングのアクションで車体に僅かなヨーが起これば、あとはイナーシャでヨーモーメントが大きくなり、そしてヨーダイビングを利用してコーナー脱出へ向けて姿勢を整えるといったフェイントモーションコーナリングが主流となり、脱出へ向けて強力なトラクションを確保するためにもアンダーステア方向のセッティングは有効となる。 |
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サーキットのような高速ターマックはしたがって得意ではない。高u路のターマックにおけるハイスピードコーナリングでは、車体の重量バランスが大きく作用するため、FFベースのランサーではもともと辛いシチュエーションとなるのだ。トラクションを確保するために、リヤデフにはLSDが組み込まれており(GSRはVCU、RSは機械式)、加速時のリヤ荷重増の状態ではピッチングによるフロント荷重減少と相まってプッシュアンダーが強くなる。オプションで装備されるフロントLSD(VCU)を備えると、この傾向は若干弱まるが、ターンイン時のブレーキングアンダーに変化はない。195/55R15というタイヤサイズも、トラクションには十分だが、コーナリングフォース面ではいささか物足りないように感じる。タイヤのグリップがそこそこのせいもがるが、ボディ剛性には不足は感じないし、またサスペンション剛性も確保されているので、基本的な骨格には相当信頼がもてる。 |
エボIで初めて採用されたインタークーラーウォータースプレーを試してみると、数秒噴射した後、かなりトルクアップを体感できた。その効果はかなりのもので、気持ちとしては常時噴射していたいほどだ。レースシーンではドライアイスでインタークーラーを冷やしてタイムアタックに入るケースもあるが、この装置は特にラリーのSSでは強力な武器となり得るものである。
このように、エボIの外観と装備はグループAのWRCを戦う上で必要不可欠なものばかりなわけだが、それを市販レベルにおいても装備しているところに注目したい。グループA、WRCの厳しいステージで効果を発揮するこれらのアイテムだが、一般ユーザーの手に渡っても役に立つだけのパフォーマンスが、エポIには与えられているということだ。 |