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ランサーエボリューション VI

エボリューションVI解剖

エボリューションVI に求められた熟成のコンセプト。

WRC2戦連続優勝を果たしたランサーエボリューションの原動力は止まることのない 進化にある。そして市販車は、WRCのレギュレーションに合わせ、ラリーマシンと してのベースを磨きつつ、同時にスポーツセダンとしての洗練を重ねてきた。つまり ベースモデルとしての性能向上をWRCへと渡し、ラリーマシンで証明された技術が フィードバックされて完成度を加速させていくという相互関係がそこにある。

このアングルからエボリューションVIを観察していこう。VIへの移行にあたっては、エンジ ンの信頼性向上、エアロダイナミクスをさらに煮詰めることが要求された。とくにWRCレギュレー ションに合わせたスポイラー形状の変更や、ハイスピード化に伴う冷却効率の向上が大 きなテーマとなっている。これまでのエボリューションとは異なり、ストリートを走る スポーツセダンとしての性格づけが強く成されていることもポイントだ。それがとくに 現れているのはフットワークを中心にしたセットアップ。コンペティションユースを第 一に考えつつも、VIではこれまで以上にドライビングプレジャーを意識させる思い切っ たセッティング変更が施されている。もちろん、そのベースになっているのは、WRCの千変万化の環境で磨かれたデータだ。

エボリューションシリーズは、時にドラスティックにそのスタイルやメカニズム をモディファイしてきた。だが、VIに込められているのは、さらにその上を行くための 技術の熟成。バランス、完成度をさらに向上することで、最新のエボリューションは最強のエボリューションという自ら課したテーマを実践しているのだ。

至高のパフォーマンスを伝達するインテリジェント4WD

進化を遂げた4G63型のパワーとトルクを余すところなく路面に伝え、様々な条件下でドライバーの意のままに動くマシンとするために、エボリューションVIのドライブトレインはさらなる熟成が加えられた。吸気リストリクターによって最高出力の制限を受けているWRCで三菱がリードを得ている最大の要因は、高度な駆動力制御にある。WRCではレギュレーション上様々なパーツ変更が可能で、ラリーマシンはXトラック製トランスミッションを採用するなど、もともと駆動システムについては市販車とはまったくの別モノと言っていいが、そのコンセプト、ノウハウは、市販車であるVIにも生かされている。つまり、4WDスポーツの概念、4輪のトラクションを効果的に制御することで得られる性能向上は、WRCのスペシャルステージにもストリートにも共通するというコンセプトだ。VIでは、Wから受け継がれて来たAYC(アクティブ・ヨー・コントロールシステム)に加えて、フロントにもヘリカル式LSDを装備。高い旋回性能に合わせ、効果的にトラクションを引き出すことに成功している。これは、主にコーナーの立ち上がりで余裕のあるフロントタイヤのトラクションを制御することによって、クルマの姿勢を安定させ、加速性能を向上させようという狙い。左右の後輪のトルク配分を積極的に行うことでスムーズな旋回性能をもたらすAYCの思想に磨きがかかった。また、RSにはモータースポーツでの過酷な条件下でも的確な駆動力伝達を可能とする、ツインプレートタイプのクラッチをオプション設定。クロームモリブデン鋼製のフライホイールと合わせてドライバーの攻めのドライビングに応えるレスポンスと耐久性をアップさせている。トランスミッションもシフトフィーリング、騒音振動、耐久性をアップすべく細部に渡ってモディファイを受け、屈指のインテリジェントスポーツ4WDのドライブトレインを完成させている。

アグレッシブな走りを可能にするボディ構造

スポーツドライビングを極めるというテーマにおいて、エンジンのチューニングやサスペンションのセッティングが注目されがちだが、実はそのキーワードはボディにある。軽く、効果的な剛性を持ったボディ。ハンドリングやトラクション、ドライバーとクルマを結ぶ信頼感にボディの剛性は大きな影響を与えるのだ。進化に伴い、サイズ、様々な補記類を加えてきたエボリューションシリーズ、しかしVIではVとまったく同じウエイトに収めた。そのうえで、ボディ剛性確保の処方箋が施された。たとえば、スポット溶接の増し打ちはエボーリューション専用の溶接ロボットを導入して行われている。また専用の薄板ボディを採用、軽量化オプションとしたRSでは、通常、クルマのボディは、ロール状になった鋼板から自動的にカットされプレス工程へと流れるところを、1枚1枚カットされた角型板材を使用するため、プレスのラインに途中から割り込ませるという方法を取っている。このようなエボリューションに対するこだわりは、ボディというクルマの土台から育まれているのだ。さらにVIを解剖していくと、最先端の構造部品用接着剤を採用するなど、軽量かつ高剛性なボディを実現するための徹底したアプローチが見えてくる。前後のウインドウ部、リヤシート後方の構造材、サスペンションのマウント部分の剛性アップを中心に骨格からアスリートの資質を磨いた。また、走行中にボディに掛かるストレスを分析し、動的アングルからボディ全体の剛性アップを実現。サスペンションをコンセプト通りに動かし、パワーを余すところなく伝えるボディが編み出された。このエボリューションVIボディ・コンシャスが、スポーツドライビングの醍醐味を余すところなく教えてくれるのだ。

サスチューンの鍵はロードホールディング

歴代のエボリューションたちの変遷を眺めていくと、サスペンションのデザイン、セットアップにいかにエンジニアたちが腐心しているかがわかるだろう。アームやジョイント部のレイアウト、ジオメトリー、ダンパーの減衰力やスプリングレートのモディファイひとつひとつに彼らのエボリューションへの哲学が見える。そしてエボWでのリヤサスペンションの全面的な見直し(ダブルウィッシュボーンタイプのマルチリンク)、エボVでのトレッド拡大などのブレイクスルーを経て、エボリューションはセットアップを煮詰めて来た。そうした背景を受けて、エボVIではさらにドライビングの深遠に切り込むテイストの表現をテーマにセッティングは煮詰められた。マシンとして先鋭化されたVのフットワークから、クルマをコントロールする表現力の豊かさを求めた。「サーキットでは速い。限界の高さ、スポーツの純度は素晴らしい。だがある意味センシティブなVのハンドリングは、ドライバーを選ぶ」という評価のあったフットワークを、VIではコントロール幅を広げることで、リラックスしてかつ速いドライバーズカーに仕立てようというコンセプトがあった。ステアリングを切り込んでいくにしたがって、滑らかに、軽く自然なロールを伴って曲がっていく。ロードホールディングを重視したセッティング。具体的には、フロントサスペンションのボールジョイント部をローアームからナックル側に移設し、約30mmロールセンターを下げ、リヤ側は伸び側のホイールストロークを伸ばすことによって、粘りのあるライド感を強調した。まさにタイヤ性能をキレイに使い尽くし、ステアリング操作に応じて素直に姿勢を変えていくコントローラブルな性格に仕上げられている。また素材置換もさらに進み、リヤトレーリングアーム、トーコントロールアーム、ロアアームにもアルミ鍛造製パーツを採用。サスペンション全体で軽量化を果たしている。

WRCが育んだ究極のスポーツセダンスーツ

全長4350mm、全幅1770mm、全高1415mmのボディには、WRCを戦う生粋のスポーツセダンとしての条件がすべて凝縮されている。レギュレーションをベーシックに磨かれた教苦言の肢体。エボリューションはその時代とともに先端のエアロダイナミクスを身に纏い、VIではさらに先鋭化された。視線を奪うのは、フロントセクションの造形。ナンバープレートベースがオフセットされ、大型のインタークーラー覗くエアインテークが露出する。これは、インタークーラーへの空気の流れを妨げていたライセンスプレートを左側にオフセットさせ、もともとボディ右側のオイルクーラーの冷却用ダクトに合わせて左側にも開けられていた穴を塞いで、空気抵抗を抑えるために加えられたデザイン変更。すでに絶対的なクーリング能力では限界と言われていたVから、さらに空気の流れを整え、効果的なクーリング性能を得るために行われたモディファイだ。バンパーの左右に振り分けられた補助ランプスペースは、Vよりも小型化された。ここには半球型のカバーが取り付けられているが、これもカバーに沿って流れる空気を増速させ抵抗を減らす効果を生み出している。リヤビューはVIの特徴的なシーンでもある。小型化されたウイングは、「WRカーのサイズに合わせること」というWRCの規定に準じて、ダウンフォースを稼ぎだすためデュアル化された。だが、その後、デュアルウイングの使用が規制されWRCでは採用されなかった。つまり、このディテールはストリートのみの仕様。VIがストリートでWRCマシンを越えるエアロダイナミクス性能を持つとされる由縁はここにある。ダウンフォースだけでなく、リヤエンドに巻き起こる空気の乱流を整え、スムーズに流すという意味でも、トライアングル形状のローウイングは効果を発揮する。究極のスポーツセダンスーツが、その後ろ姿から窺えるだろうか。

スポーツセダンの本流を走る厳選されたエクイップメント

ランサー・エボリューションVIは身にまとうエクイップメントにも、スポーツドライビングの快感をイメージさせる逸品を求めた。ドアを開くと広がる硬派のセダンの意匠。操作系は、人間工学に基づきベーシックながらも的確に情報を読み取り、ダイレクトな操作に結びつくコンベンショナルなデザイン。メーターパネルやスポーツシートがブルー地に変更されたこともエボVIの証だ。またそのシートは、スポーツツアラーには欠かせない、レカロ製の無段階リクライニング式フルバケットシートが与えられている。
エクステリアに目を転じると、ここにもWRCを彷彿とさせるブランドが奢られている。補助ランプはPIAA製。コンパクトながらも視認性の高い照射角度を持ち、光量も申し分ない。フットワークを支えるのは、スリムなフィンスポークデザインを展開するOZレーシングのホイールと、エボVI用に最適化チューニングを受けたブリヂストン・ポテンザS01タイヤ。17インチ×7.5JJサイズに225/45R17のコンビネーションだ。OZレーシングの細いスリットから覗く真紅のキャリパーはエボリューションの強力なパワーに合わせて誂えられたブレンボ製。それも既製のものを与えたのではなく、開発中にブレンボのエンジニアが自らテストをしセッティングを行った専用品である。
 ストリートを舞台にするスポーツセダンとはいえ、究極を求めたエボVIには、ラリーマシンにも匹敵するエクイップメントへのこだわりが見える。“最強のエボリューション”の誇りがそこにも見ることができる。